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            | 2025. 5. 6 | Ver. 1. 2 | カウンタ廃止 |  
            | 2024. 7.15 | Ver. 1. 1 | 電源トランスの情報追加 |  
            | 2015. 7. 1 | Ver. 1. 0 | 公開初版 |  1 はじめに
 松下通信製のファンクションジェネレータVP-7402AのJUNKを購入しました。このファンクションジェネレータに関する情報は少なく、回路図も公開されていません。この理由は、当時の説明書についていた回路図がいわゆる「青焼き」であり、経年による劣化のため、判読不可能となっているためのようです。そこで、もし求めがあれば、実際に調査した内部回路と定数を公開するかもしれません。
 オークションでも結構見かける形式であり、トップカバーが青系のものは初期型、ベージュ系のものは後期型のようです。丁寧な設計となっているため、手を入れれば、JUNKでも復活の可能性は高いですが、調整箇所が大変多いため、半固定抵抗器は触らないのが鉄則です。
 入手した今回のVP-7402Aは、発振出力が異常であるとの理由で格安で入手しました。ちなみに1977年製造です。
 
 2 VP-7402Aについて
 VP-7402Aは下記の諸元のファンクションジェネレータです。汎用部品の組み合わせであり、ほとんどの部品の同等品が現在も入手できるため、保守性は良好です。その代わり、代替品への交換後の再調整は一定の技術力が要求されそうです。
 
 
        
          
            |  | 項目 | 仕様 |  
            | 1 | 発振周波数 | 0.001Hz-5MHz |  
            | 2 | 出力 | 20Vp-p(Open)  10Vp-p(50Ω) |  
            | 3 | 出力調整 | 0-60dB |  
            | 4 | 直流オフセット | ±10V(open) ±5V(50Ω) |  
            | 5 | ランプ出力 | 5Vp-p(open) |  
            | 6 | モード | RUN,GATE,TRIG,PULSE,BURST,SWEEP |  
            | 7 | 波形 | 正弦波、矩形波、三角刃、ランプ波Sin,Square,Triangle,Ramp |  
            | 8 | ランプ | 10,100μS,1,10,100mS,1,10S |  
            | 9 | 入出力端子 | SYNC OUT,TRIG IN,VCF IN,RAMP OUT,RAMP SYNC, |  
            | 10 | VCF | 1000:1(外部電圧により、1000:1のスイープが可能) |  
            | 11 | 調整可能な特性 | START LEVEL,DC OFFSET,RAMP POLARITY |  
            | 12 | 電源 | AC100V 30VA |  
            | 13 | サイズと重量 | 148H×208W×300D   5kg |  
            | 14 | 価格 | 270,000円 |  3 VP-7402Aの内部構造
 さて、次はVP-7402Aの内部構造です。
 
 
        
          
            |  | 画像 | コメント |  
            | 1 |  | トップカバーをはずした状態です。多くの半固定抵抗器がありますが、決して回転させてはなりません。後悔します。それよりも先になすべきことがあり、後述します。 
 画像の左下が三角波発生部、右上が三角波から正弦波への変換部、左上がトリガー回路、右下が出力増幅部です。
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            | 2 |  | フロントパネルです。発振するかどうかを確認するには、下記の設定とします。 (1)FREQ.RANGE:×100Hzなど比較的低い周波数レンジ
 (2)メインダイヤル:1から10の間
 (3)FUNCTION:正弦波
 (4)RAMP MODE:OFF
 (5)MAIN MODE:RUN
 (6)DC OFFSET:OFF
 (7)START LEVEL:RUN
 上記とした後、電源スイッチを投入します。
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            | 3 |  | 底板を外した状態です。画像上半分はランプ波発生部と極性反転部、下半分は電源部です。 電源部は安定化出力が
 +23V
 +12V
 −12V
 −23V
 +5V
 −6V
 です。当時のICは電源電圧の制約が多いため、このような複雑な構成となっています。
 まず、トリガー回路に当時(1977年頃)としては高速のコンパレータμA710Cを使用するため、必然的に+12Vと−6Vが必要となります。次に多数使用しているOPアンプの電源電圧として±12Vを用意するため、−12Vが必要となります。さらに、最大出力電圧を出力開放時、20Vp-pとするため、±23Vとしています。
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            | 4 |  | リアパネルです。内部回路のグラウンドとシャーシーアースを接続するジョンソンコネクタがあるのが特徴的です。通常は画像のように短絡板で接続したままとします。 海外向けに使用できるよう、電源トランスの1次巻線は0-100/115Vが2組あり、これを組み合わせて、画像の4種類の電圧に対応します。
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            | 5 |  | 本体の左側側面です。電源トランスは5巻線の専用品で、端子番号と電圧は下記のとおりです。 
 
              
                
                  | 1次 巻線A
 | @ | A | B | AC200-230V時にのみ、1次巻線Bと直列接続して使用。この場合、CとAまたはBを接続する。 |  
                 
                  | 0 | 100 | 115 |  
                  | 1次 巻線B
 | C | D | E | 常時使用する。 |  
                  | 0 | 100 | 115 |  
                  | 2次 巻線C
 | F | L | G | ±12V回路用 巻線電圧は推定
 |  
                  | 16 | 0 | 16 |  
                  | 2次 巻線D
 | H | L | I | ±23V回路用 巻線電圧は推定
 |  
                  | 25 | 0 | 25 |  
                  | 2次 巻線E
 | J | L | K | +5/-6回路用 巻線電圧は推定
 |  
                  | 9 | 0 | 9 |  |  
            | 6 |  | 本体の右側側面です。画像中央の四角いものは三角波発生回路の積分コンデンサであり、0.001Hzレンジ用です。 各スイッチは延長シャフトがあったり、複数のスイッチウエハーが串刺し状態となっています。
 |  4 VP-7402Aの修理
 入手したVP-7402Aは正常な波形が出ていません。そこで、手持ちの回路図を見ながら修理しました。
 
 
        
          
            |  | 画像 | コメント |  
            | 1 |  | 入手した直後は、正弦波出力波形を観測すると左のように歪んでいます。 |  
            | 2 |  | 矩形波出力とするとduty cycleが50%になっていないことがはっきりわかります。VP-7402Aにはduty cycleを50%以外にする機能が無いにもかかわらず、このような動作をしています。 |  
            | 3 |  | 機器が異常動作している時は、まず電源電圧の確認からです。 VP-7402Aでは内部の各回路の動作の基準電圧は、+12Vの電源電圧を分圧して作成しています。+12V以外の電源電圧も+12Vを基準として作成しています。そこで、赤丸の中のTEST
            POINTの電圧を測定します。正常時の電圧は下記のとおりです。
 TP8:+12.00V
 TP9:+23.0V
 TP10:−23.0V
 TP11:−12.0V
 TP12:+5.0V
 TP13:−6.0V
 TP8の電圧が+12.00±0.05Vとなるよう、黄色の円内のR625(1kΩ)を回します。この限度内であれば、触らないほうが良いでしょう。
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            | 4 |  | 次に、出力波形をオシロスコープで観測しながら、フロントパネルの切り替えスイッチ類ツマミを触ります。回転させて切り替えていないにも関わらず、波形が不規則に変化するなら儲けものです。スイッチ類の接点不良により異常波形となっている可能性が高いからです。 今回入手したVP-7402Aのスイッチの各接点を、接点復活剤を含ませた綿棒で清掃しただけで、左記のようにduty
            cycleが50%の綺麗な波形となり、はんだごてを使うことなく正常復帰しました。
 なお、接点復活剤の代用品として潤滑剤の「KURE 5-56」(呉工業製)は絶対に使用してはなりません。短期間のうちに合成樹脂部品が破損し、修復不可能となります。また、同社の「エレクトロニッククリーナー3012」もトラブルを生じました。サンハヤト等の電子機器用機材メーカーの接点復活剤をできるだけ少量使用します。接点に直接スプレーするよりも、綿棒に含ませて極少量使用するほうが良い結果が得られます。なお、綿棒の繊維を接点に引っ掛け、接点を変形させないよう注意深く作業します。
 |  5 おわりに
 高性能ファンクションジェネレータが修復でき満足です。
 
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